蜜味センチメンタル
「まあ話聞いてもらえるなら私はなんでもいいですよ。とりあえず、おかわりもらえますか?」
次はブラッディメアリーで。味変をしたくてそう言えば先に反応したのは那色で、小悪魔的な笑みを浮かべていた。
「羅華さんは僕をご指名みたいです。なので店長は他のお客様の対応をお願いしますね」
「いや…別にお前を指名してる訳じゃ」
「ほらほら、あちらの方達が呼んでますよ。はい、いってらっしゃい」
一体どちらの立場が上なのだと尋ねたくなるような砕けた態度で那色は大和の背を押す。これはそれなりに長い付き合いなんだろう。
仕方ないといった様子で大和が肩をすくめて別の客のところへ向かったので、羅華は改めて那色と2人でカウンター越しに向き合う形になった。
「那色くんはキッチンに入らないの?」
「僕はラウンドでの採用なので」
「あ、そう…」
「羅華さんは店長と随分親しいようですけど、付き合い長いんですか?」
「そうだね。私が就職した時からだから…3年くらいになるかな」
「ふーん…」
「代理店って板挟みになる事が多いし、それこそ入社した当時は右も左も分からないから相当参ってて。この店見つけたのは本当にたまたまだったんだけど、その時から通い始めていつの間にか常連になっちゃった」
仕事のストレスは変わらないし、なんなら年々増していっている気もするが大変でない仕事は無い。
今もなお週明けに残してきたデスクの上を考えると頭痛がするものの、とりあえず今は忘れようと皿の上の具材にフォークを突き刺した。
「じゃあ羅華さんは、店長に癒されに来てたって事ですね」
「それはちょっと語弊かな。偶にキャパオーバーになった時に愚痴らせてもらってただけで、私は純粋に食事とお酒を楽しみに…」
「なら今度からは、僕に会いに来てください」