蜜味センチメンタル

澱みなく真っ直ぐに言われた言葉に羅華は一瞬だけ固まる。しかしすぐに何事も無かったかのようにフォークに刺した海老を口へ運んで食し、ゆっくりと時間をかけて飲み込んだ。

「…営業文句にしては、随分と情熱的なお誘いだね?」

明らかな作り笑いを貼り付けて言い返すと、那色はおもむろに目を細めた。

「やっぱり。羅華さん、あなた相当モテるでしょ」

「いやそんな事は…」

「嘘。口説かれ慣れてるって顔してますもん」

「……」

「代理店の営業なんて華やかな業界にいて、芸能人や大手企業とも繋がりがあって、おまけにその容姿。さぞかし派手に遊んでるんでしょう?」

「えっ、と…」

「その遊び相手に、僕も加えてくださいよ」

作業台に手をつき、微笑む那色はそう言って少しだけ身を乗り出す。

羅華を遊んでいる女だと決めつけそこに混ぜろと言われ。どう反応を返したものかと考えていると、勢いよく歩み寄ってきた大和にバシッ!と那色は頭を叩かれた。

「那色。お前いい加減にしろ」

言葉通り憤った様子で那色を睨み、大和はため息混じりに続ける。

「お前のその"美人は全員遊んでる"って偏見、改めろって何度も言ってるだろ。羅華ちゃんに謝れ」

何故か何も悪くない大和に謝られ、羅華はいいえと苦笑いを返す。

「痛いなあ。叩かなくたっていいじゃないですか。羅華さんだって否定しないですし、事実なんでしょう?」

「那色!」

せっかく大和が取り持ってくれたというのにデリカシーの無いこの言動。こういう浅慮なところはいかにも子供らしい。

これはきちんと言わないと同類だと決めつけられかねないなと、羅華は「那色くん、」と未だ自身の頭を撫でる青年に話しかけた。


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