蜜味センチメンタル
「会えない間の栄養源にしたかったのに」
「栄養源…?」
「そうですよ」
サンドイッチをほとんど噛まずに飲み込むように平らげた那色は、今度はキッシュに手を伸ばす。
「ちゃんと好きな人ができたのが初めてだから気づかなかったけど、僕、どうやら燃費が悪いみたいで。定期的に羅華さんに会って“栄養補給”しないと、飢餓状態になって何かやらかしそうになるんです」
「……」
「写真一枚でそれが回避できるなら、安いもんじゃないですか?」
キラキラと効果音がつきそうな那色の笑顔とは対照的に、羅華の表情は明らかに引きつっていた。
「……飢餓状態って、なにするつもりなの?」
「さあ? けど僕、行動力だけはあるもので」
「……」
悲しいけど、その自信には妙に説得力がある。
思い返せば出会ってから今日まで、まだたったの2週間。1ヶ月にも満たない期間だ。
それなのに毎週のように会い、家に泊まり、デートを重ね、キスまでしている。
ここまで関係が進んでいるのは、ひとえに…いや、どう考えても那色の“行動力”の賜物だった。
……賜物、って言い方もちょっと違うけど。
「これまで誰と付き合っても、何日…いや何ヶ月会わなくたって平気だったのに、羅華さんのことは別れた瞬間から恋しくなっちゃうんですよねえ」
そう言いながらスマホをいじっていた手を止め、那色はふいに顔を上げた。
「そうだ。僕が卒業したら、一緒に住みません?」
「はっ!?」
思わず裏返った声が漏れる。
また突拍子もないことをと思う間もなく、羅華は強めに否定した。
「何言ってるの? 一緒に住むって……私たち、付き合ってすらいないんだよ?」
「じゃあ、付き合ってください」
「“じゃあ”って……」
その言い方はまるで、ついでのようで。
羅華は複雑な気持ちを抱えたまま、眉をぎゅっと下げた。