蜜味センチメンタル
「じゃあ聞きますけど、羅華さんは僕のこと、どう思ってるんですか」
真正面から投げかけられた問いに、羅華の胸は静かに、けれど確かにざわめいた。
真っ直ぐに向けられる那色の視線。逃げ場がなかった。視線を逸らしても、紅茶に口をつけても、自分の心の奥に入り込みすぎていて、何も隠せない気がした。
けれど、答えは出てこなかった。羅華が沈黙を続けていると、那色の眉が少し下がる。
「頑固者。過ぎた意地は身を滅ぼしますよ」
「なっ……」
「まあでも、分かりますよ。言い寄られたら誰とでも寝るようなクズの言うことなんか、信用できませんよね。心変わりもすぐだって、自分で言ってましたし」
そう言いながら、那色はふっと短く息を吐く。嘲るような、でもどこか自嘲にも似た吐息だった。
「でも、それって当然なんですよ。お互い、遊び半分の軽い気持ちで始まって、本気で好きになったわけじゃなかったんですから」
正直に言って最低だった。
だけど羅華は、責める言葉を口にできなかった。
暴言の裏に、初めて会った日と同じようにどこか傷ついた表情を見てしまったからだ。
「正直に言います。最初に羅華さんに声をかけたのは、ただの興味本位でした。綺麗な人だと思ったし、すごく好みだったから」
「……」
「けど、元彼のことを忘れられない理由を聞いて……ほっとけない人だなって思った」
伏せていた視線が、静かに羅華を見上げた。
「……羅華さんが泣きながら“お母さん”って呼んでる姿を見て、この人も同じなんだって思ったら、もう離したくなくなった」
「……同じ?」
思わず問い返した羅華に、那色は小さく頷いた。
「親の勝手に振り回されて、母親に囚われて、抜け出せない。——寂しい人なんだって」
「……」
ゆっくりと、音もなく目を見開く。
——親の都合?
その言葉が胸にひっかかった。思いつくままに問いかけようとする羅華を前に、那色はふと唇の端を上げて、柔らかく微笑んだ。