蜜味センチメンタル
「決めつけてるところ悪いけど、実は私、彼氏も中学の時に少しの間いただけでほとんど男性とお付き合いした事ないんだ」
「え、嘘。そんな経験豊富ですみたいな見た目で羅華さん処女なんですか」
「那色!!」
またしても那色は良い音を立てて大和に叩かれ、頭を下に倒されながら大和に謝罪させられる。
「羅華ちゃん、本当にごめん!もうちょっと分別ある奴だと思ってたんだけど…」
「良いんです。気にしてないので謝らないでください」
実際、派手な容姿が邪魔してこういった揶揄われ方は何度もされてきた。だが割り切ってしまえば特に恥ずかしい事でもなく、恋人が欲しいという願望も全く無い羅華には、毛ほどもダメージは無い。
「そんな訳で、那色くんの相手に私は力不足なんだ。ごめんね」
これぞ大人の対応。クライアントに揉まれ上司に揉まれ、日々様々な無理難題を押し付けられる羅華にとって、年下の戯言など真面目に相手をするに及ばなかった。
しかし、型にハマった大人では予想できない行動をとるというのも、また子供ならではの特徴である。
「いえ、逆に興味が湧きました」
「え?」
大和に押さえつけられた手を払いながら顔を上げる那色は、言いながら羅華を見る。
「ならその初めての相手、僕にしてください」
「はい?」
「羅華さん、僕と付き合いませんか」
「……」
那色の意図を図りかねて見つめるも、思いの外真面目な顔をしていて余計に混乱する。
「なっ…!お前何言って、」
「ちょっと黙っててくださいよ。要は遊びじゃなければいいんでしょ。久しぶりの本気モードなんで、邪魔したら店長でも怒りますよ」
「……」
言葉通り睨まれ、大和は罰が悪そうに羅華を見て「ごめん」と口パクで伝える。
大丈夫ですと意味を込めて苦笑いを返すと、羅華は幼子を諭すように那色に話しかけた。