蜜味センチメンタル
そして羅華の言葉通り、その十数分後にアイドルグループの面々が到着する。
男性アイドルユニット、Stratos (ストラトス)。元々起用予定だった及川白雪と同じ事務所に在籍する今をときめく4人組だ。それぞれが俳優やモデル、MCなど多方面で活躍しており、ファン層も厚い。
そんな彼らは現場に入るなり、まぶしい笑顔で口々に挨拶を飛ばしてくる。
「よろしくお願いしまーす!」
「お疲れ様です!」
ここに鎌田がいれば飛び上がって喜びそうな光景だ。しかし那色の美しい顔を見慣れてしまった羅華は、全くと言っていいほど心が動かなかった。
「お疲れ様です。Stratosの皆さん、本日はお忙しい中ありがとうございます」
羅華が一歩前に立ち、リーダーの男に声をかける。モデル顔負けに整った顔立ちの彼は、簡潔に「分かりました」と頷いた。
その後ろからは、「うわ、美人」といった小声が漏れ聞こえる。
「改めまして、今回は急なご依頼にもかかわらずお引き受けいただき、ありがとうございます」
短く礼を述べたあと、タブレットを開きながら説明に入る。
「今回のCMでは、昨年まで担当されていた及川さんのイメージから少し趣を変えています。“シンプルな甘さ”と“冬との調和”をテーマに、セットは白を基調としたミニマルな構成にしています」
ひと呼吸置いて、演出の意図を続けた。
「みなさんの個性と人気を活かすため、コンセプトは『推しがあなたに会いにくる』です。ソロカットを数パターン撮影したうえで、グループ全体にもフォーカスした構成にしたいと考えています」
言い終えて視線を上げ、柔らかく問いかける。
「ご不明な点やご質問があれば、遠慮なくお聞かせください」