蜜味センチメンタル
「なんだか少し痩せました?ちゃんとご飯食べてますか?」
「会食続きで寧ろ外食ばっかりだよ。胃もだけど、肌なんかもぼろぼろ」
「そんなことないです。前と変わらず綺麗ですよ」
「…っ」
以前なら冗談だと本気にしなかったその台詞に、反応してしまう。それがただのリップサービスなんてこと、分かっているはずなのに。
「あれっ、羅華ちゃん。久しぶり」
返す言葉に躊躇していると、スタッフルームの扉から大和が出てきた。彼の登場に、羅華は無意識に安心する。
「元気だった?相変わらずこの時期は忙しそうだね」
何年もの付き合いになる為、この時期に羅華の来店頻度が減ることを大和は当然知っていた。
「そうなんです。任される数も規模もどんどん大きくなってパンクしそうです」
「クリスマス前だしねえ。これからイベントなんかの予定もみっちり詰まってるんじゃない?」
「はい。だからしばらくは、まともな週末も過ごせなさそうです」
今日はたまたまスケジュールがリスケになった。そう言葉を続けると、大和は笑いながら那色に話を振った。
「那色。お前も社会人になるんだから来年からは覚悟しとけよ」
「余計なお世話ですよ」
辛辣な言葉を返されたにも関わらず、大和は全く気にした様子もなく笑う。
「…そういえば、那色くんてどこに就職するの?」
なんとなくタイミングを掴めず聞けていなかった事を尋ねる。那色は少しだけ羅華に目配せをすると、すぐに手元に視線を落とした。
「サービス業です」
「……」
——それだけ…?
羅華の心に不安が落ちる。どうして隠すんだろう。そんなに信用されていないのか。
そんな不安が顔に出ていたのか、那色は困ったように続けた。