先輩はぼくのもの

「なんでアイツのこと、そんな風に思えんの?」


「えっ…と……」


瀬戸くんの言葉の意味がわからない。



ポツ…ポツ……

「あ、雨…」


ポツポツと降り出した雨が一瞬で強い雨に変わった。


「ちょっと待ってて!傘取ってくる!」

家に戻ろうとしたら、腕を掴まれた。



「意味わかんねぇよ…なんでアイツばっか……」

「瀬戸くん…!?」


少し俯いてるからわかりにくいけど…
だけど…


「大丈夫?なにかあったなら話聞くよ」


瀬戸くんが今にも泣きそうな顔をしていて、放ってはおけなかった。


でも!!
今はとにかく傘だ!!


「瀬戸くん、ひとまず腕を放してー…」
ギリッ

わたしの言葉とは真逆に、腕を掴む力が強くなった。



もうお互いびしょ濡れ。



瀬戸くんになにがあったかわからない

だけど、こんな瀬戸くんを今、ひとりには出来ない。



「…わかった」

「え…?」


わたしは腕を掴まれたまま、家に向いドアを開けた。



「もう詩、こんな雨の中どこにー…って、、え!?」

「お母さん、タオル持ってきてー。てか、お風呂借りていい?」

「もちろんよ!!ふたりともびしょ濡れじゃない!!」

「瀬戸くん、お風呂入ってきて」

「え、いや、、なんで…」

「風邪ひくから。早く」

「俺帰るしいいってー…「早く入って」







え、なんで俺、先輩(あの人)の家で
しかも風呂に入ってんだ??


「瀬戸くん。タオル置いてるから使ってね!服もお父さんのだけど置いてるからー」

「は、はい…」


わからない。

言われるがまま、気づけば風呂にいた。




「あ、上がった?ドライヤーもしてね」

脱衣所から出ると、ちょうど桜井先輩がやってきた。


「もう大丈夫です。帰ります」


言えない



「風邪ひくから!ドライヤーちゃんとして!」

「……はぁ、、」


また脱衣所に戻らされ、ドライヤーをする。



言葉に出来ない



【ありがとう】が言えない俺



「飲み物なにがいいー?紅茶とか好き?」

「はい…」


そしてリビングで紅茶飲んでる俺。


なにしてんだよ。



「桜井先輩も風呂入らないと…」

「あ、うん!じゃあサッと入ってくるね」


このひと、変だ



この人といると、なんか調子狂う。

うまくいかない。



「瀬戸くんだっけ?お腹減ってない?」

「あ、いえ!大丈夫です」


桜井先輩のお母さん
見ず知らずの俺に優しくしてくれる。



お人好し家族



胸くそ悪いはずなのに


「うま…」


出してもらった紅茶が美味しいせいだよな
この居心地が良い感情は。


それ以上もそれ以下でもない。



そうだよ



「あれ?来客中?」


すると、聞き覚えのある声が聞こえた。



「あれ…?おまえ確か…」


戸倉龍弥。



「…お久しぶりです」


「おー、なんでここにいんの?」

「ちょっとなりゆきで…てか、戸倉さんはなんでここに?」

理由は知ってるけど
知らねーフリしとかないと。


「俺、しばらく居候させてもらってんの」

「そうなんですね。世間狭いですね」


俺の兄貴の友達。


「本当、狭いな」

なに笑ってんの
この役立たず。



「あれ、龍弥おかえりー」

「おー。じゃ、俺風呂借りるわ。またな、弟〜」



案の定、目をぱちくりさせて俺を見ている先輩。


「龍弥と…知り合い?」

「えぇ。兄貴の友達が戸倉さんなんです」

「わぁ!そうなんだ!!みんな繋がってて嬉しいね!」


なんでそんな風に喜べんの?

なにがそんなに嬉しいことなの?



「お邪魔しました、帰ります」


そろそろアイツが帰ってくる。
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