先輩はぼくのもの

どんな手を使っても


「左腕にヒビが入っていますが、3、4週間ほどでギブスは取れると思います。ひとまず少し安静にしてからご帰宅ください」

「ありがとうございました」


あれから救急車を呼んで病院までやってきた。
気絶してた狩谷くんも、無事目を覚ましてくれた。


「先輩、泣きすぎですから」

「だって…!!ほんとに心配だったんだからね!!」

「ごめんね、でも心配してくれて嬉しいです」


わたしのせいでこんなヒドイ目に遭って…


「ねぇ先輩、お願いしていいですか?」

「ん?なに??」

なんでも言って!!!


「喉乾いたんでなにか飲みものほしいです」

「もちろん!!すぐ買ってくるね!!!」


わたしはすぐ病室を出た。


・・・・・・・・・


「先輩、なにがほしいとか聞いていかなかったけど大丈夫かなぁ」

「…よく言うわ。わざと部屋から出したくせに」

「さすがっすね。わかってました?」


出会った時から嫌な予感はしてたんだ。


「んで?今回の件はどこまでが計画で、どこからが事故なわけ?」

「は?なにがですか?」

「こんなめんどくせーことして、自分の身削ってさ」


ぼくの勘は当たる。



「はぁー…やっぱ先輩って面倒くさいっすね」

「それはどーも」


身を削って…か。


「ぼくにとってはこんなこと、なんともないんですよ。自分の身なんてどうでもいいんです」


「は!?そんなんじゃ身も蓋もねぇだろ」


「詩先輩が手に入るならそれでいいんです」


ぼくはゆっくりと起き上がる。
そんなぼくを支えようと田村が近づいてくる。


パシッ

「大丈夫です。自分で出来ますから」

「…可愛げねーのな」


「もし…」

やっと起き上がることが出来た。


「ぼく自身が詩先輩にとっての“障害”になるなら、ぼく自身なんてどうなったって構わないんですよ。わかりました?」


ーー・・
ぞくっ…
なんだ?今の挑戦的な、でも暗くて冷たい目つき、なにより桜井さんへのこの執着のような異様なもの……
そして自分の身を顧みない。


「あんたって詩先輩のこと好きなの?」


「…気になってる」


まだ自分の気持ちがちゃんとわからない。


「即答出来ないってその程度なんすよね?なら、これ以上邪魔しないでください」


ドクッ
確信を突かれた。


「でもおまえ、今回のことはやりすぎー…!」
「ほんとに消しますよ?詩先輩の前から」


まただ。
さっきのような、暗く冷たい目。


「おまえー…」


ガラッ!!

「お待たせ!!」


桜井さんが戻ってきた。



「詩先輩、ありがとうございます」

さっきまでの目つきが嘘のように、嬉しそうに笑っている。


そして、チラッとこっちを見る。


ぞくっ・・・
その目つきに寒気を感じた。



俺が思っていた以上に相当ヤバイ奴なのかもしれない。
< 37 / 64 >

この作品をシェア

pagetop