先輩はぼくのもの

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「あの…ほんとに良いのでしょうか?」

「もちろんよ!!こんな大怪我負わせてしまって本当にごめんなさいね」

「いえ、ぼくが悪いんです。ご迷惑をおかけして申し訳ありません」


19時前。
場所はわたしの家。

そして、このやり取りは狩谷くんとお母さん。


「先輩、お言葉に甘えてすみません」

「なんで!全然だよ!」


狩谷くんは一人暮らしだから、ギブスした状態だと色々生活しづらいだろうから急遽ウチに来てもらうことにした。


「お風呂はもうちょっと待ってね。夫が帰ってきたらサポートしてもらうわね。ご飯出来るまでゆっくりしててね」

「いや、ほんとに悪いです。ぼくー…」


お母さんはご飯などの準備に夢中で、狩谷くんの話を聞かずにバタバタとリビングに戻っていった。


「忙しない母でごめんね」

「なんで先輩が謝るんですか。ぼくね、」

狩谷くんが右手でわたしの頬に触れる。


「こうして先輩と長く一緒にいれるなら…ずっとギブスしときたいぐらいです」


ドキッー・・・



「狩谷く…」

「先輩…無事でほんとによかった」


あ…狩谷くんの顔がゆっくり近づいてくる。。




ガチャッ

わーーーーーーーーー!!!!!

わたしは今までにない速さで狩谷くんから離れた。



「なに…してるんだ、おまえたち」

「お、お父さん!おかえりー!お父さんを待ってたんだよ!!」

「…そうか」


あ、危なかったー!
キスしてるとこ、見られるとこだったよ!!



お父さんが狩谷くんの前で立ち止まる。


「…きみも早く来なさい。もうすぐご飯だろうから」

「あ…はい。ありがとうございます」


あれ…?
お父さん、狩谷くんに対して前より冷たくなくなった…?



ーーーーーーーー

「お父さん!優しくだよ、優しく!」

「あーもう!わかったからおまえはあっち行け」


脱衣所のドアあたりでぼくの心配をしてくれていた先輩は、お父さんのひと言で渋々リビングへと戻っていった。
あぁ、可愛過ぎる。
ほんとは一緒に入りたい。
だけど、この腕じゃなにも出来ないしね。

あー、今回のことで唯一の後悔かも。


お風呂も借り、先輩のお父さんがフォローしてくれることになった。


「すみません。お疲れのところ、ご迷惑をおかけしてしまって…」

「かまわん。早く入りなさい」

お風呂のドアを開けたままで、脱衣所から腕を伸ばし、お父さんが背中を洗ってくれる。



しばらく続く沈黙。
背中を洗ってくれる音だけが響く。


「…謝るのはこちらだ。申し訳なかったな、娘のことでこんなにひどい怪我を負わせてしまって」


え、、、


「いえ、これはぼくがー…」
「こちらの責任だ。治療費なども全てこちらでさせてくれ」

「違います。これはぼくが勝手に動いたからで先輩はなにも悪くないんです」


「…きみは詩の彼氏だそうだな?前会った時は聞いてなかったが」


お父さんの声が少し低くなった。


「はい。前お会いした時はまだ付き合ってなかったので…すみません」

「はは。すまない、なにも怒ってなんかないよ。詩が彼氏をわたしたちに紹介してくれたのは初めてでね。嬉しいような寂しいような…複雑な気持ちだよ」


え…そうなの?
北村は…?

そういえば前、ぼくが北村のこと言いかけた時止めに入ってたな。


ヤバ…
なんかすげー嬉しくてどうにかなりそ。
先輩…ぼくは特別なんですか?


「ー…狩谷くん?」

「あっ!はい!」

ヤバ。お父さんいるの一瞬忘れてた。



「きみの親御さんに連絡させてもらっていいかな?今回のことをきちんと謝りたくて」



あー…
親  か


「いえ、大丈夫です」

「しかし…」


目の前がなんだか霞む。


「ぼく、両親いませんから」


別に嘘は言っていない。
ただ、これ以上聞かれるのは鬱陶しくて…

「そうか。悪かったね」


……お父さんはそれ以上深く聞いてこなかった。

なんだかホッとしてしまった。


頭を洗うのも手伝ってもらい、先にお父さんが脱衣所を後にする。


「ありがとうございました」

ドアを閉める直前、こちらに振り返ったお父さん。


「なにか困ったことがあったらいつでも言いなさい。わかったね?」


「え…!それってー…」

お父さんは優しく笑ってドアを閉めた。



ズキッー…

なんだよ、この感情は。
今まで感じたことないような気持ちは。
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