先輩はぼくのもの
偶然は繰り返す
「え!!??部長と別れたの!?しかも部長が浮気してたって!?」
「うん…」
次の日のお昼休み、食堂で亜紀に別れたことを報告。
昨日家に着いてからしばらくして少し冷静になり、夜メッセージを送った。
《別れて》と。
「最低だね!部長!!見損なった」
「わたしに魅力がなかったんだよ」
「そんなわけー…!「そんなことあるわけないですよ」
後ろから声がして振り向くと、狩谷くんがいた。
「北村先輩がクズだっただけです」
「そう…かな……」
昨日、狩谷くんが一緒にいてくれて助かった。
ひとりであの場面を目撃してたら…どうしてたんだろう。
「狩谷くん、昨日はほんとにありがとう」
「全然いいですよ。焼肉行けるの楽しみにしてます」
そう言ってすごく可愛く笑うから、一瞬ドキッとしてしまった。
「なになに焼肉って!?あたしも行きたーい!」
「太田先輩もぜひ♪じゃあまた」
狩谷くんは去ってしまった。
「ほんとあの子爽やかボーイだねぇ。モテるだろうなぁ」
「そうだね。すごくいい子だよね」
ーーーーーーー
は???
あんたなんか一緒に行くわけないだろ。
ぼくと先輩のデートを邪魔するやつは許さない。
それにしても、今日の先輩も可愛かったなぁ。
〈そう…かな……〉
さっきのあの表情。
まだ北村のこと引きずってる表情だった。
あーウザイ。
あんな奴のことなんて、これっぽっちも考える必要なんてないんだよ?
「早く…ぼくしか見れないようにしたい……」
・・・・・
「いらっしゃいませ…ってあれ!?狩谷くん!?」
「えっ!先輩!?」
「どうしたの??」
「えっと…ここのパン好きなんで買いに来たんです」
「そうだったんだ!お昼も食堂で会ったし偶然だね」
「ほんとに。先輩、ここでバイトしてるんですか?」
「うん、そうなの」
知ってたよ。
「ここのパンが好きって…前から来てくれてたの?」
「はい。もう3ヶ月ぐらい経ちますかね」
「そうなんだ。今まで会ってたかもだよね」
「ほんとですね」
ううん、ごめんね先輩
ここで会ったことはないんだよ。
「狩谷くん!今日も買いに来てくれてありがとう!」
「店長、こんにちは。いつも美味しいパンありがとうございます」
「あれ…店長と狩谷くん、知り合い??」
「狩谷くん、よく買いに来てくれるからさ。仲良くなったんだよね」
「そうですね。店長の作るパン美味しくてファンになりました」
わざと今まで先輩がいない日に来てたんだよ。
チラッと入り口の窓に貼っているアルバイト募集の紙を見る。
「店長。アルバイト募集してるんですか?」
「そうなんだよ〜!先週急にひとり辞めちゃってさ!」
そうだね。
大変だよね。
「ぼくでよかったら…働きましょっか?ここなら大学からもそんな遠くないし」
ガシッ!!
店長に両手を握られた。
「ほんと!?ほんとにほんと!!??ぜひ!!いつから入れる!?」
ほーら、簡単。
「狩谷くんと桜井さん、知り合いなんだよね!?じゃあ、桜井さん色々教えてあげてくれる?」
「え、あっはい」
詩先輩
まだ、状況が飲み込めてないかな?
「先輩、ぼく働くことになったのでこれからここでもよろしくお願いします」
「う、うん。よろしくね」
またひとつ、一緒にいれる時間が増えた。