先輩はぼくのもの
イタリアンのコースの最後にはバースデーケーキが出てきて、もう感動と嬉しさがマックスに込み上げて泣いてしまった。


「先輩大げさだよ」

「だって…嬉し過ぎて…!」

ハンカチで涙を拭ってくれる。


ひそっ
「そんな可愛かったから今ここでキスしますよ?」


ドキッ!!
わたしは急いで平然とする。


「あはは!そんなに嫌ですか」

「違うよ!恥ずかしいからで…」

「わかってますよ♪先輩ほんと可愛いんだから」

モゴモゴするわたしに、頬杖をついて笑いながらそう応える想汰くん。



幸せ過ぎて怖くなる
って、こういうことなんだと生まれて初めて知った。




「夜ご飯までご馳走になってごめんね」

「なんで謝るんですか?先輩の誕生日なんですから当然です」


気づけば22時半を回っていた。


「早く帰らなきゃお父さん心配しますね」

「いいもん、遅くなっても」


まだ帰りたくない。


繋いでいる手にギュッと力を込めた。



家まであと10分もない距離。



グイッ

「きゃっ」

急に引っ張られて、気づけば人通りの少ない路地裏に来ていた。



ふにっ
想汰くんの指がわたしの下唇に触れて、ゆっくりと唇をなぞる。


ゾク…
唇をなぞられただけで、身体がドキドキしてしまう。



「ぼくが我慢してるのわかってます?」

「…え……?」

次の瞬間、唇に想汰くんの唇が触れた。




「んー…」

わたしの唇を包み込むように、そして食べちゃうようなキス。
全身に甘い痺れが起こる。


もっと…って思ってしまう。



「先輩…口開けて?」

ドキンッ!
改めて言われるとドキドキが増して、恥ずかしさも増していく。


「早くしなきゃキスやめるよ?」

意地悪想汰くんだ。


わたしの顔は絶対真っ赤。

それでもキスをやめてほしくなくて、ゆっくりと口を開ける。



「よく出来ました♪」

想汰くんの舌がわたしの口に入ってきて、キスが深くなっていく。



「ぷはっ……!そう…くん…!くるし…」

「まだダメ」

人が来たらどうしようとか不安があったのに、今はそれよりもこの甘いキスに夢中で他になにも考えられない。




しばらくして、ゆっくりと離れる唇。
名残惜しいのは…わたしだけかな。



「帰りましょっか」

さっきまでのキスが嘘のように、現実に引き戻される。



「…うん」

これ以上ワガママ言っちゃダメだよね。



手を繋いで帰る道。
まだまだ家なんか着かなかったらいいのに。



こんなに人を想ったのは初めてで、この気持ちが【好き】の言葉だけじゃ片付けられないような、それぐらい自分の中で想汰くんが大好きで大事で愛しくて離れたくない。

そんな自分のワガママな感情に戸惑ってしまう。



そんなことを考えていると家に着いてしまった。



「先輩、今日は1日ありがとうございました」

「それはわたしのセリフだよ!本当にたくさんありがとう。嬉しかったよ」

「喜んでもらえてよかったです」


繋いでいた手を放す想汰くん。
わたしは咄嗟に離れた手をもう一度掴んでしまった。


「先輩?」

「あ…!ごめんね」

急いで手を放した。



これ以上離れたくないって言ったら…しつこいよね。



「ねぇ先輩。今度先輩の部屋に行ってもいいですか?」

想汰くんの言葉にドキドキが一気に増していく。


「いい?」

わたしの心臓の鼓動は最高潮で、声をうまく出せずただただ必死に頷いた。



「よかった。その時はー…」

想汰くんがわたしの首元に顔を近づけた。



「今日のこの香りは…つけないでね?」

「え…?」


今なんてー・・・
そう思った瞬間、首筋に鈍い痛みが走った。


ぢゅっ

「あ……」

無意識に出た自分の声にビックリして、急いで口に手を当てた。



「じゃーね、先輩。おやすみなさい」

「お、おやすみなさい……」


想汰くんは甘い痛みを首筋に残して、笑顔で帰っていった。



ガチャッ

「ただいま」


ドタドタッ
階段を降りてくる足音が聞こえたと思ったら

「詩!おせーよ!」

その足音はやっぱり龍弥だった。


「だってデートだもん」

「メッセージ送ったのに無視だし」

「スマホ見てなかった。ごめんね」


まだ…余韻から冷めたくない。



「ごめん、龍弥。お風呂入りたいから何か用事あったなら後で聞くね」


「詩」

お風呂場に向かおうとしたら腕を掴まれた。


「どうしたの?なにか急ぎ?」


「…ごめん、なんでもない」

掴んでいた手を放した龍弥。


わたしはお風呂場の方へ向き直してその場を離れる。



「香水…!香り、どうだった?」


「え?」

振り向くとなんだか不安そうな表情の龍弥。

もしかして…このことを気にしてたの?

わたし、、せっかく誕生日プレゼントをくれたのに自分のことばっかりで失礼な態度を取ってしまってた、、、


「龍弥ごめんね」

「は?なんで謝るんだよ」


「香水、すごくいい匂いだよ。これからも使うね♪ありがとう!」

そう伝えてお風呂場に向かった。




「…なんだよ。その笑顔、反則だって」




ーーーーーーーーーーーーーー


バタンッ

真っ暗な自分の家に入って現実に戻る。


あー、先輩可愛かったなぁ。
もっと一緒にいたいだって

ぼくもそうだよ。
帰したくなんかなかったよ。


だけど、大好きだからこそ大切にしたい。



空の写真立てを持って眺める。


やっとこれに写真を入れれるんだ。







でも


やること、やらなきゃな。




あんな香り、先輩に似合わない。



ウザイ挑発してきやがって

かわいい素直な先輩は、きっとアイツに言われるがまま香水でもつけんだろう。


誕生日プレゼントか?





あーウザイ。




許さない。




邪魔なんかさせない。


排除しねーとな。
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