先輩はぼくのもの
ガチャッ
久しぶりの先輩の部屋。
部屋を見渡す。
あ、これだな。
棚の上に見慣れない香水があった。
蓋を開けると、この前デートの時に匂った香り。
先輩が今まで香水をつけるなんてこと、ぼくの知ってる限りなかった。
絶対龍弥(アイツ)だ。
バタバター…
階段をのぼってくる足音が聞こえて急いで香水を鞄に入れた。
「おまたせー」
「ありがとうございます。手伝わなくてすみません」
「全然だよー」
あぁ、かわいい。
こんなかわいい先輩がアイツと一緒に住んでるとか、吐きそうで狂いそうでたまらない。
いそいそとテーブルに飲み物を並べて、座ってから一気にジュースを飲み干した先輩。
「ぶはっ!!」
「え!なに!?」
「喉乾いてたの?一気に全部飲んだから」
すると顔を真っ赤にして
「だ、だって…ちょっと久々に想汰くんにゆっくり会えたからドキドキしちゃって…」
こんなことを言う。
あー、もう。
これわざとだろ?
そう思ってしまうぐらい、かわいい。
「それ、オレンジジュース?」
「うん」
「ぼくも飲みたい」
「じゃあ入れてくるー…」
立ちあがろうとした先輩にキスをした。
「…思ったより酸っぱい」
「ひゃっ…100%だもん……」
グイッ
顔を赤くしてそう言う先輩を押し倒した。
床に倒れてぼくを見上げる顔もかわいくてぼくの理性をなくさせる。
「ねぇ先輩。キスの先…する?」
たぶん断られるだろうな
「…うん。したい」
え……
「しよ…?」
ぼくの首に腕を回してキスをされた。
プチンッと理性が切れたのがわかった。
「…ふ……んっ」
キスをしながら可愛いパジャマの上を捲り上げる。
「やっ…」
下着の上から胸を触っただけなのに、なにこの可愛い反応。
首にキスを移しながら下着をずらして直接胸に触れた。
ヤバイ…
大好きな先輩に触れてるんだ、ぼくは
もう止められない。
「先輩…好きです」
そう言って先輩の顔を見ると
「わたしも…大好きだよ」
涙目でぼくを見ながら微笑んでくれて
「んっ!!」
ほら
やっぱり先輩はぼくに攻撃するんだ。
余裕をなくさせるんだ。
息をすることを忘れてしまいそうなほど、キスをする。
そしてゆっくりと先輩のズボンを下ろして太ももを撫でる。
撫でる指を少しずつ上に向かわせる。
「あ…そうたく…」
ガチャンッ!!
次の瞬間、下に響く大きな音。
「詩〜?いるのかー?」
「…わ!!お父さんだ!!」
焦る先輩の服を整えてあげる。
「ぼくがおじさんに挨拶してくるんで先輩は落ち着いたら来てください」
「でも…!!」
「そんな表情(かお)、見られたらなにしてたかバレますよ?」
先輩の部屋をあとにして、一階に向かった。
・
・
・
・
・
わ、わぁー!!!
なにこのドキドキは!?
わたし、変な顔してる!?
〈そんな表情(かお)、見られたらなにしてたかバレますよ?〉
想汰くんの言葉が頭の中でリピートされる。
「お父さんの…バカ。。。」
ーーーー
「あれ?想汰くんは!?」
「挨拶して帰ったぞ」
「え!?」
自分を落ち着かせてから一階に向かうと、もう想汰くんは帰ったあとだった。
夜ご飯、食べてないよね?
大丈夫かな。。
一緒に食べようと思ってたんだけどな。。
それに
聞きたかったこと
また、聞けなかった。。
・
・
・
・
バタンッ
部屋の電気を付けて現実に戻る。
ぎゅっ…
鞄から香水を取り出して握りしめた。
先輩はなにも悪くない。
きっとプレゼントにでももらって
先輩のことだから素直に喜んで
大切に部屋に飾ってたんだろう。
自分が選んだ香りを先輩に付けて
ぼくを挑発してるつもりか?
いや、そんな可愛いもんじゃないか。
ウザイ
ガシャーーンッ…!!!
右手を振りかざして床に叩きつけた。
部屋には、あのムカつく香りが充満している。
割れた香水の破片を拾っていると指を切った。
右手の人差し指から血が出てくる。
その血がポタポタとゆっくり床に垂れていく。
「もう…止まんなきゃいいのに」