先輩はぼくのもの

「え?」


「今も想汰くんがどうしてるかわからないし…好きって言ってくれるけど…」

「けど?」


「なんか…見えないことって言うのかな、、、知らないことが多くて不安になる」


薬指の指輪をぎゅっと握った。



「わたしって年上なのに頼りないのかな!?」


わたしの突然の大声に田村くんが目をパチクリさせている。



「桜井さんって狩谷のことすげー好きなんだね」

田村くんの言葉に、自分の顔が一気に赤くなるのがわかった。



「な、なにを突然!?」


「俺もわかんないけど、アイツってあと一歩ってところで壁作らない?」


あ、なんかわかるかも。


「頼りないとかそんなんじゃなくて、アイツが無意識に作ってんじゃないかな。自分でもわかってなさそうだし」


田村くんってすごく想汰くんのことを考えてくれてるんだな。。


「そんなアイツの固まってるなにかを溶かしてあげれるのが桜井さんだと思うけど?」


胸がぎゅっとなる。


「わ、わたしが…」

「そ。ほんとアイツってむずいってゆーかめんどい所あるよな」

そう言いながら田村くんが笑い出した。

「誰も寄せつけないようにしてるつもりでも、オーラ隠せてねぇし」


わかる!


「だよね!自分で自覚してないんだもんなぁ」

わたしもつられて笑う。


「だけど、脆いくせに隠そうとすんだよな」


想汰くんが熱を出していた時や腕を怪我していた時のことを思い出す。

辛いのに自分のことは後回しだもんな。


わたしのことばっかり優先する。


「田村くん、ありがとう!わたし、もっとグイグイいってみる!想汰くん、守れるような人になりたい!」


「うん、頼むよ」


想汰くん、とっても素敵なお友達が出来てたんだね。


「田村くん、想汰くんのことすごく解ってるね」

「なんか目離せなくない?危なっかしいとゆーか」

「これからも想汰くんと仲良くしてあげてくださいね」

「それはもち〜」


わたしは勝手に悩んで勝手に浮かれてた。



想汰くんがあんな風に考えてしまうような行動を取ってしまっていた。



わたしが   いけないんだ。




ーーーーーーーーーーーー


《すみません、ちょっとバタバタしてました》

夕方、想汰くんからきたメッセージ。


《なにかあった?大丈夫?》


《全然大丈夫です。今日バイト終わったら会いに行ってもいいですか?》


ほら、わたしって単純。
想汰くんのこの言葉が嬉しくて浮ついてしまう。



だけど、今日は聞くんだ。



ーーーー

「バイトお疲れ様」

「ありがとうございます」


バイト終わりにわたしの家に寄ってくれた想汰くん。


「先輩、よかったら先輩の部屋で話しません?」

ドキッー・・

この前の想汰くんの言葉を思い出す。


〈ねぇ先輩。今度先輩の部屋に行ってもいいですか?〉



「うん、いいよ」


ドキドキしながら家の中に一緒に入る。



「おばさんたちは?」

「お母さんは友達とご飯行ってて、お父さんは残業で遅いんだ」

「そっか。アイツは?」

「えっと…龍弥のこと?」

「はい」


想汰くん、龍弥のことアイツ呼ばわり。。
仲良くなってほしいのになぁ…


「龍弥もいないの。大学の人たちと飲み会みたい。もう仲良くなってるってすごいよね!」


グイッ

「きゃっ…」

靴を脱ごうとしたら腕を引っ張られて壁に背中が当たった。

そして唇には少し久しぶりの感触。



「ふぁっ…想汰くん……」

少し長いキスに息が苦しくなった。


「アイツの話聞きたくない」

ムッと拗ねたような顔が可愛くてきゅんとする。

 

「想汰くんが聞いたんだよ!」

「あー、、はい、そうでしたね」


まだムスッとしてるけど笑ってくれた。



「なに飲みたい?飲み物準備してくるから先に部屋行ってて」

「ありがとうございます。コーヒーをお願いします」

「オッケー♪」


わたしは浮かれてた。
数日ぶりに想汰くんに会えたから。
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