【番外編】橘さん、甘すぎ注意です

とろけるほど、愛して

着替えを終えて、バッグの中身を片付け終えた紗良は、ようやく一息つこうとソファへと向かう。
「ふぅ……」とつぶやきながら腰を下ろそうとした、その瞬間だった。

——視界の隅に何かが動いた気がした。
次の瞬間、すでに紗良の体は壁際に追い込まれていた。

「えっ——」
声を上げる暇もなかった。

死角に身を潜めていた航太が、静かに、だが迷いのない動きで彼女の腰を掴み、ぐいと壁際に押しやる。
そしてそのまま顎をすっと持ち上げ、紗良の目線を上げさせる。

「やっ、ちょっと——」
その言葉は完全に封じられた。

航太の唇が深く重なり、紗良は口の中で小さな悲鳴を上げる。
けれどそれも、息ごと飲み込まれてしまう。
彼の胸元のシャツをギュッと掴むのが精一杯で、抗う余裕すらなかった。

(うそ……まさか、最初から……!)
必死に堪えながら、紗良は理解する。
冷蔵庫に向かったのも、あの何気ない笑顔も、全部……この一瞬のための布石だったのだと。

やっと唇が離れたと思ったのも束の間、航太は低く、静かに囁いた。

「俺を欺こうなんて——100年早い」

紗良が顔を真っ赤にしながら「ちょっと、さっきは——」と何か言いかけた瞬間、

「——問答無用」

再び、口づけが落ちた。
紗良の言葉ごと、心ごと、航太は甘く深く奪っていく。

——抵抗しようとした気持ちはすでにどこかへ消えていた。
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