私の愛した彼は、こわい人
「大丈夫。アスカはジンに大事にされてるわよ」
「そうですか……?」
「体張ってDV男から救い出して、ちゃんと自分で世話もして。今までのあいつだったらありえない行動だわ。あたしはジンの幼なじみであって、親友でもある。それに家族とも言えるの。掴み所がないあいつが考えることも、理解しているつもり。だから、ジンにとってはアスカは特別ってこともわかるの。あたしが保障するわ」

 ユウキさんの言葉の数々に、私の胸はじんわりあたたかくなる。
 幼なじみ。親友。家族。
 二人は、ひとことでは言い表せないほど深い仲なんだ。
 なんて、素敵な関係だろう。

「ユウキさんのご家族が、オーナーを迎え入れたと聞きました」 
「そうなのよ。うちのママも、あたしらが小学生のときからずーっとジンを気にかけてたから。ねっ、ママ?」

 と、ユウキさんはテーブル席でお客さんの相手をしていた着物姿の女性スタッフに声をかけた。
 白髪を夜会巻きで綺麗にまとめている女性の背中をまじまじと見て──私は、ハッとする。
 あれ? あの人は。
 着物を纏っていて雰囲気が違うので、気づかなかった。でも、上品な立ち振る舞いは全く変わってない。

「柳田オーナー……?」

 彼女は、私の呼びかけに反応するようにこちらを振り返る。
 優しい笑顔を向けてくるのは、間違いなく、柳田オーナー──ベル・フルールの前オーナーだったのだ。
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