私の愛した彼は、こわい人
「鈴本さん、お久しぶりですね」
「お久しぶりです。あの。どうして柳田オーナーがここに?」
「ふふ。鈴本さん。オーナーとは呼ばないで? わたしはもう、ベル・フルールを卒業したのですから」
「す、すみません。……柳田さん」

 柳田オーナー……柳田さんとのやり取りを眺めるユウキさんが、にこやかに言った。

「アスカ。紹介するわ。ベル・フルールの前オーナー、柳田キョウコはあたしのママなの。オーナーを辞めてから時々ここで働いてるのよ」
「えっ。えぇ?」

 思考が、追いつかなくなりそうだ。
 前オーナーの柳田キョウコさんはユウキさんのお母さん。ということは、つまり……

「柳田さんが、神楽オーナーを家族として迎え入れたんですかっ?」
「ええ。実はそうなんですよ」

 オホホ、と上品に笑うと、ゆっくりとカウンターの中へ入っていく柳田さん。
 ユウキさんと並んでみると、なんだかあまり似ていない。一番は、雰囲気が違う。違いすぎて脳がバグりそうになる。

「今のお話、聞こえていましたよ。ジンが鈴本さんとお付き合いなさっているとか」
「あっ、いえ、誤解なんですそれはっ!」
「一緒に暮らしているんでしょう?」
「そうなんですけど、それには色々わけがあってっ」
「ジンをどうぞよろしくね、鈴本さん」

 あ、あのー。だから恋人でもなんでもなくて私はただの同居人なんですが……。
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