私の愛した彼は、こわい人
◆
「ちょっとアスカ。なーに暗い顔してのよ」
ある日の夜。私は一人でオアシスに訪れていた。
カウンター越しで、ユウキさんが呆れたように私を眺めている。
「ジンのことが心配なのね」
「……はい」
はぁ、と大きく息を吐いて、ユウキさんはブルーハワイカクテルを差し出してくれた。今日もユウキさんが注ぐカクテルは海色に輝いていてとても綺麗。
でも、私の心は曇ったまま。
「また、あの人がジンさんの店に押し入ったみたいで……」
「あんたの元カレでしょ? ホント迷惑よねぇ」
マンションで夕食を一緒に摂っていた際、ジンさんのスマートフォンが鳴った。電話の相手は、新橋にある店の従業員。
あの人が──タクトが、ジンさんを出せと言ってまた押しかけてきたそうだ。
「話には聞いたけどさぁ。どうしようもないバカ男よね。ま、安心しなさい。ジンがやられるわけないし」
「ですが……」
迷惑を被っていることに変わりない。
こんなトラブルを起こされるたび、ジンさんがタクトを止めに行かなきゃならないなんて。お店の人たちにだって、そこにくるお客さんにも迷惑をかけていることになる。
本当に恥ずかしいよ、タクト。
「はい、もうそんな顔しないの! あたしの超おいしいカクテルでも飲んで元気出しなさい!」
「……ありがとうございます。いただきます」
心配事なんて、全て流してしまいたい。私はブルーハワイカクテルをいつもより勢いよく喉に流し込んだ。
「まあ。大胆ねぇ」なんてユウキさんに言われる。私だってたまにはお酒の力を借りて気を紛らわせたいの。
でも……なんだろう。ブルーハワイが、いつもと味が違う気がする。甘さよりも、苦みがあるような、ないような?
「もしかしてブルーハワイの味って変わりましたか?」
「ん? 別に変えてないわよ」
「そうですか……?」
もう一口、味わってみる。舌の上に爽やかな風味が広がるはずなのに……今日は違和感がある。
それどころか、なんだか胸焼けがする。カクテルを一杯飲んだだけで?
顔が熱くなってくるし、胃もムカムカしてきた。
これは……
「なんだか今日は、あんまり調子がよくないかもしれません」
「あら、珍しい。もういらないの?」
「はい……すみません。あの人のことで考えすぎで、疲れたのかもしれません」
「あんま悩みすぎもよくないわよ? タクシー呼ぶから、今日は早めに帰ってちゃんと休みなさい」
「はい。そうします。ご馳走さまでした」
もう少し飲みたかったしユウキさんとお話したかったけど、大人しく帰った方がよさそう。
マンションに帰るなり、私はベッドに倒れる。ジンさんが「事は済んだ。もうすぐ帰る」と連絡をくれて。
ちゃんと待っていたかったのに、安心したのか彼が帰る前に眠ってしまった。
ちゃんと休めば、体調もよくなるはず。
「ちょっとアスカ。なーに暗い顔してのよ」
ある日の夜。私は一人でオアシスに訪れていた。
カウンター越しで、ユウキさんが呆れたように私を眺めている。
「ジンのことが心配なのね」
「……はい」
はぁ、と大きく息を吐いて、ユウキさんはブルーハワイカクテルを差し出してくれた。今日もユウキさんが注ぐカクテルは海色に輝いていてとても綺麗。
でも、私の心は曇ったまま。
「また、あの人がジンさんの店に押し入ったみたいで……」
「あんたの元カレでしょ? ホント迷惑よねぇ」
マンションで夕食を一緒に摂っていた際、ジンさんのスマートフォンが鳴った。電話の相手は、新橋にある店の従業員。
あの人が──タクトが、ジンさんを出せと言ってまた押しかけてきたそうだ。
「話には聞いたけどさぁ。どうしようもないバカ男よね。ま、安心しなさい。ジンがやられるわけないし」
「ですが……」
迷惑を被っていることに変わりない。
こんなトラブルを起こされるたび、ジンさんがタクトを止めに行かなきゃならないなんて。お店の人たちにだって、そこにくるお客さんにも迷惑をかけていることになる。
本当に恥ずかしいよ、タクト。
「はい、もうそんな顔しないの! あたしの超おいしいカクテルでも飲んで元気出しなさい!」
「……ありがとうございます。いただきます」
心配事なんて、全て流してしまいたい。私はブルーハワイカクテルをいつもより勢いよく喉に流し込んだ。
「まあ。大胆ねぇ」なんてユウキさんに言われる。私だってたまにはお酒の力を借りて気を紛らわせたいの。
でも……なんだろう。ブルーハワイが、いつもと味が違う気がする。甘さよりも、苦みがあるような、ないような?
「もしかしてブルーハワイの味って変わりましたか?」
「ん? 別に変えてないわよ」
「そうですか……?」
もう一口、味わってみる。舌の上に爽やかな風味が広がるはずなのに……今日は違和感がある。
それどころか、なんだか胸焼けがする。カクテルを一杯飲んだだけで?
顔が熱くなってくるし、胃もムカムカしてきた。
これは……
「なんだか今日は、あんまり調子がよくないかもしれません」
「あら、珍しい。もういらないの?」
「はい……すみません。あの人のことで考えすぎで、疲れたのかもしれません」
「あんま悩みすぎもよくないわよ? タクシー呼ぶから、今日は早めに帰ってちゃんと休みなさい」
「はい。そうします。ご馳走さまでした」
もう少し飲みたかったしユウキさんとお話したかったけど、大人しく帰った方がよさそう。
マンションに帰るなり、私はベッドに倒れる。ジンさんが「事は済んだ。もうすぐ帰る」と連絡をくれて。
ちゃんと待っていたかったのに、安心したのか彼が帰る前に眠ってしまった。
ちゃんと休めば、体調もよくなるはず。