私の愛した彼は、こわい人
 体力は瞬く間に落ちていき、仕事も完全に行けなくなってしまった。
 つわりが落ち着いている隙を見てサロンへ電話をかけ、阿川店長に報告した。妊娠の件はさすがに言えなかったが。
 電話越しで店長はとても驚いてるようだった。

『大変なときに電話してくれてありがとう。でも体調不良の原因がわからないなんて……大丈夫なの?』
「……はい。すぐ治まると思います。それよりも長期休みをいただくことになってしまい申し訳ありません」
『仕事のことは気にしないで。柳田さんやスポットワーカーの人たちを呼んで回しているし。なんとかなるわ』
「柳田さんも癌の治療で大変なのに……」

 柳田さんは今回だけじゃなく、私がタクトから逃げ出した翌日にも私の代わりに施術に入ってくれていたのだという。一度だけじゃなく、何度も迷惑をかけてしまって本当に申し訳なく思う。

『もちろん無理のないようにしてもらってるわ。指名のお客様には鈴本さんがしばらくお休みすることは説明しておくわね』
「なにからなにまですみません……」
『気にしないで。元気になったらまたいつでも戻ってきてね。お大事に』

 店長の労りの言葉に、なんとも言えない感情がこみあがった。
 みんなを巻き込みすぎている。本当に自分が情けない……。
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