私の愛した彼は、こわい人
車は赤信号に引っかかった。ゆっくりとブレーキをかけ、オーナーはおもむろに私の方に手を伸ばした。
そのまま逞しい指先が触れて──
優しく、撫でられる。
わ。
えっと……神楽オーナー。
また、ですか?
以前、早朝のサロンでも髪を触られた。
この、唐突で理由もわからないオーナーの行動に戸惑う反面──なぜか胸が高鳴ってしまう。
なにか言いたげな顔をする割に、彼の口から言葉は出てこない。ぎこちなく首を横に振り、再び前を向いた。
とんでもないよ、これ。非常に気まずいです。
胸のドキドキは収まらないし、顔は熱くなるし、肩に力が入っちゃうし。
だけど、なんだろう。彼に頭を撫でられると緊張と共に「懐かしさ」も感じた。
リュウお兄さんが私を撫でてくれたときの感情と重なって……。
全くの別人なのに。おかしいよね。気が動転しているせいか、私、どうかしてる。
「今でも忘れられないのか、そいつのこと」
青信号になり、オーナーは静かにアクセルを踏み込んだ。
私は大きく頷く。
「今でも夢に出てくるほどです。彼のこと、リュウお兄さんと呼んでいました」
忘れない。忘れられない。この先もずっと忘れたくない人。
過去の記憶が次々と蘇り、自然と口から思い出から溢れていく。
「実は私、施設で過ごしていた時期がありまして」
「施設。養護施設のことか」
「はい」
私、やっぱり変だ。
封印していた自分の過去を、このタイミングで語ろうとするなんて。サロンのみんなにも友だちにも、それにタクトにさえ話したことがないのに。
よくわからないけれど……オーナーには伝えたいって、心がうずいてしまった。
そのまま逞しい指先が触れて──
優しく、撫でられる。
わ。
えっと……神楽オーナー。
また、ですか?
以前、早朝のサロンでも髪を触られた。
この、唐突で理由もわからないオーナーの行動に戸惑う反面──なぜか胸が高鳴ってしまう。
なにか言いたげな顔をする割に、彼の口から言葉は出てこない。ぎこちなく首を横に振り、再び前を向いた。
とんでもないよ、これ。非常に気まずいです。
胸のドキドキは収まらないし、顔は熱くなるし、肩に力が入っちゃうし。
だけど、なんだろう。彼に頭を撫でられると緊張と共に「懐かしさ」も感じた。
リュウお兄さんが私を撫でてくれたときの感情と重なって……。
全くの別人なのに。おかしいよね。気が動転しているせいか、私、どうかしてる。
「今でも忘れられないのか、そいつのこと」
青信号になり、オーナーは静かにアクセルを踏み込んだ。
私は大きく頷く。
「今でも夢に出てくるほどです。彼のこと、リュウお兄さんと呼んでいました」
忘れない。忘れられない。この先もずっと忘れたくない人。
過去の記憶が次々と蘇り、自然と口から思い出から溢れていく。
「実は私、施設で過ごしていた時期がありまして」
「施設。養護施設のことか」
「はい」
私、やっぱり変だ。
封印していた自分の過去を、このタイミングで語ろうとするなんて。サロンのみんなにも友だちにも、それにタクトにさえ話したことがないのに。
よくわからないけれど……オーナーには伝えたいって、心がうずいてしまった。