私の愛した彼は、こわい人
 多くの車と人が行き交う街を走り、やがて車はとあるビルの地下に潜っていく。新宿三丁目にある高層ビルの駐車場。
 スムーズに駐車させ、オーナーはエンジンを切った。

「すぐ近くに俺が経営するバーがある。そこで少し休もう」
「はい。あの……すみません。私ばかり喋ってしまって」
「別に気にするな」

 オーナーはふと、こちらを振り向いた。じっと、私を見つめて──

「むしろ俺は、アスカ(・・・)の話が聞けてよかった」

 ……ん? あれ。
 今、私を「アスカ」と呼びました……?
 いつも「お前」とか「おい」とか、「鈴本」って呼んでいたのに。なぜ突然、下の名前?
 私が困惑しているのも関係なしに、オーナーはさっさと車から降りてしまった。
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