私の愛した彼は、こわい人



 十二月上旬。神楽オーナーがベル・フルールに来てからひと月が経った。
 彼との関係はハッキリしないまま、私は変わらず西新宿のマンションで暮らしている。
 ベル・フルールでの仕事も相変わらずだ。

 夜七時。帰りのサロンミーティングで、先月の最終売上が阿川店長より報告された。
 ソファには、怖い顔をしながら大胆に座り込む神楽オーナーの姿が。 

「十一月のご報告です。施術消化率百一・二パーセント。サロン売上達成率は百三十パーセントで、うち新規と更新契約は百六十万、物品販売が百五十二万です」
「ビュート化粧品の売上は」

 オーナーはすかさず問いただす。
 冷静に阿川店長は答えた。

「ビュート化粧品シリーズはおよそ八十三万円の売り上げです。定期購入は三十六件獲得しました」
「いいだろう」

 満足げな顔をしてオーナーは頷いた。
 ……すごい。いきなり八十万以上の売上を達成するなんて。継続利用もすでに三十六名。ご新規の方にも今後薦めていく計画だから、購入者はまだまだ増える見込み。
 私が感心する横で、オーナーはあくまでも真顔を貫いた。

「新しい物に興味を寄せるのは当然だ。定期購入を契約した客から解約されないよう今から対策を考えておけ。販促で要望がある場合は俺に連絡するように。ビュート社に直接交渉をかけてやる」
「ありがとうございます」

 阿川店長が深々と頭を下げた。
 正直、オーナーがここまでしてくれるなんて。比べてはいけないけれど前オーナーは基本的にあまり口出ししてこなかったし、サロンに顔を出したのも数えるほどだった。
 十一月の売上が前年に比べて遙かに上回っているのも事実。ベル・フルールの売上はさらに伸びるだろう。
 改めて彼は経営者としても凄い人なんだなと思う。
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