モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています
颯もノンキャリアながら、そこまで上り詰める素質がある。キャリア組の雅人が目をかけているくらいなのだから。
「なぁに、アンタも仕事辞めろって言われたの?甲斐性あるじゃない」
母親に問われたあかりは首を振る。
「自分が仕事辞めるって。私には仕事を捨てれないだろうからって」
「よく見てるじゃない、あかりのこと。そりゃあ雅人が目をかけているだけあるわね」
ふふふ、と笑う母親とは反対に、あかりはテーブルに顔を突っ伏した。
「どうしたらいいんだろう……?」
「そんなの自分で決めなさい。お祖父ちゃんにも言われたでしょう」
独り言のように呟いた甘えの言葉にピシャリと叱った母親は、あかりに一つだけアドバイスする。
「ちゃんと両方の話を聞くことは前提として。特に彼の意図をよく聞くことね」
「彼ってどっち?」
「お兄ちゃんが推している方」
「颯さん? なんで?」
あかりの問いかけに母親は何かを分析したかのように少しだけ眉を寄せる。そうするといつも穏やかな顔が一瞬で厳しいものになるのだ。幼い頃から見てきたが、その表情だけで母親が全盛期、父よりも優秀な警官だったと理解できるくらいである。
思わず姿勢を正したあかりに母親は自身の考えを告げたのだ。
「男が仕事を辞めるって言い出すのはよっぽどよ。特に仕事が好きな男がね。なにかトラウマがあるのかもよ」
思いもよらなかった母親の指摘に、あかりは言葉を失ったのだった。