モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています
兄の暴言と弟の苦言
あかりが母親との話を終えて台所を出ると、とっくに帰ったと思っていた雅人が声をかけてきた。
「こっちに来い」
横柄な言い方をしながら指で広縁を指す雅人に大人しく従ったあかりは、腰掛けながら隣で電子タバコを取り出す兄を見つめる。
憎たらしいことに吸っている銘柄は彼と同じだ。燻らせている匂いを嗅ぐと、一瞬で颯のことを思い出される。
兄はゆっくりと一本吸い終わると、二本目を口に咥えた。一口吸い、吐き出した息と共にあかりに質問をする。
「山科の生い立ちは知っているか?」
「生い立ち?」
あかりは聞き返す。雅人は呆れたような目であかりを見返した。
「バーカ」
「なっ……!?」
「何も聞いていないのに、よく恋人面できていたな」
突然の兄の暴言にあかりはムカッと腹を立てる。兄はあかりのことなど気にもかけず、スパスパと残りを吸い切ると立ち上がった。
「じゃあ、俺行くわ」
サッサと立ち去っていく兄の背中を呆然と見ながら、あかりは一人呟いた。
「なによ……それ」
とはいえ、あかりの心に雅人の言葉は深く突き刺さったのだった。