モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています


 目の前の岩に抱きしめられた。と、同時に「グッ……」と短い呻きが聞こえたと思うと、怒号が飛び交う。
 女性の泣き声の合間に制圧! や、逮捕! の声が響き渡るが、抱きしめられているあかりには何も見えなかった。

「はや……山科係ちょ……」
「山科警部補っ!? 大丈夫ですか!?」
 あかりの声を打ち消すように、男性警官の声がかかる。

「あぁ……しくった」
 颯の体が離れる。やっとあかりにも状況が把握できた。
 颯の左肩には、DV男が突き立てたナイフが刺さったままだったからだ。
「すぐ救急車呼びます!」
「いや、大したことないから呼ぶな」
 固辞する颯を注意したのは、あかりと共に来ていた早野だった。
 彼はどこからか持ってきた紐と誰かから借りたのだろう警棒を使い、傷口の上をキツく縛るとナイフが動かないように固定する。
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