モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています
「こりゃあ深いね。すぐ病院に行ったほうがいい。……君、救急車」
はいっ! といい先程の警官がすぐに救急依頼をかける。その横で颯は食い下がっていた。
「早野さん、俺は大丈夫……」
「じゃないから、山科くん。素直に言うこと聞きなさい」
ピシャリと颯を叱った早野の矛先はあかりにも向かう。
「あかり、さっさと彼女の元に行く! 不安で泣いているだろうが」
「はいっ!」
弾かれたようにあかりは駆け出す。その間にも早野は日頃のおっとりした態度とは別人のようにテキパキと指示を出す。
「山科くん、ここの指揮権は預かるな。元々生活安全課の管轄だ。あぁ、そこの君、救急車来るまで山科くんが動かないように見張っていて。山科くん、久保くんは借りるよ。ちなみにその警棒、久保くんのだから」
矢継ぎ早に飛んでくる指示に誰も口を挟めない。コクコクと頷く周りの人間を確認すると早野はコキコキと首を鳴らし、グルグルと肩を回した。
「よし、久しぶりにオジサン頑張っちゃおうかな」
立ち上がり颯爽と去っていく早野に、颯はホッと息を吐く。早野が指揮を取るなら、これ以上大きな騒ぎにはならないだろう。
普段はのほほんとしているが、彼は警視庁でも一目置かれる存在なのだ。今それを存分に発揮している早野の背を見送りながら、颯は小さく呟いた。
「痛ぇな……」
今頃ズキズキと痛みだした肩に、颯は小さく舌打ちしたのだった。