モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています
「山科くんのことは吹っ切れたんだね」
「なっ……!?」
早野の言葉にあかりは絶句する。早野はあかりをそっちのけで一人頷いて、少しだけ寂しそうに頷いた。
「そうか、山科くんの悪あがきは成功しなかったか。なんだかんだ言いながらあかりは情に絆されると思っていたけど。君たちの結婚式で上司として挨拶するのが夢だったけど、こればっかりは仕方ないね。残念だけどこういうことはタイミングもあるから」
あかりは驚愕した目で早野を見る。この上司はどこまであかりと颯のことを把握していたのか。
「全然知らないよ。あかりも山科くんもそんなこと話さないでしょ。あくまで推測だよ、す・い・そ・く」
不思議な節をつけながら、早野は茶目っ気まじりにあかりに言った。早野の言うことは事実だろう。颯もプライベートの話をペラペラ言いふらすタイプではないし、あかりも必要以上の報告はしていない。
早野の観察眼には驚くばかりだ。
あかりはもう一度深いため息をつくと同時に、早野という警察官の底知れぬ能力に一人震えたのだった。