モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています
「え? あかりちゃん!?」
突然背後からかけられた驚きの声に、あかりはびっくりする。振り向かなくてもわかる。
理貴だ。
振り向いたあかりは予想通りの人物の姿を確認して、どんな顔をしたらいいのかわからず立ち尽くす。
会うかもしれないとは思っていた。それでも実際に顔を見るとどうすればいいのかわからない。
「社長、その方は?」
理貴と共にエレベーターホールから出てきた男性があかりを不審げな目で見つめてくる。理貴は、あぁ、と短く頷いて早口で説明をする。
「友人のお姉さんだよ。ほら、何回か話したことある幼馴染の……」
「あぁ、彼女が……」
男性は理解したというような表情を浮かべると、取り出したタブレットで何やら確認した後、理貴に進言する。
「社長、確かその方とお取引出来たら、と以前お話されていましたよね? 本日はこの後の予定はございませんし、もし彼女のご予定がないようでしたら軽くお打ち合わせされては? まだ営業の者も何名か残っていますし、お話するのでしたら早いのに越したことはありませんから」
理貴は突然の男性の言葉を瞬時に理解したようだ。サッと顔を経営者のそれに変えた理貴はあかりにいつもは見せない、柔和だが心に壁を作ったような笑顔を向ける。
「そうですね。福田さん、お時間ありますか? でしたら少し仕事のお話でも如何でしょう?」
問いかけているのに有無を言わせぬ圧を込めた理貴に、あかりはコクンと頷いたのだった。