モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています
彼が守りたい場所
「どうぞ」
応接室は空いてなかったからと打ち合わせ用の小部屋に案内し、ミニサイズのペットボトルをあかりと理貴の前に置いた三十半ばの男性――聞くと、理貴の秘書らしい――は丁重に頭を下げる。
そんなことをされると逆に恐縮してしまう。あかりも慌てて頭を下げた。
「ありがとうございます」
あかりの様子に少しだけ口元を緩ませた秘書は、先程よりもフランクな口調になる。
「では、ごゆっくり」
「ありがとうございます。みんなにもう帰るように伝えてくれますか。帰り際に色々手配してくれて助かりました」
「いえいえ。ですが、帰る際はくれぐれもお気をつけて。……では失礼します」
ドアがパタンと閉められるまで社長の顔を崩さなかった理貴だが、二人きりになると急に相好を崩した。
「嬉しいなぁ、あかりちゃんと会えて」
先程の貼り付けた笑顔とは真逆の見慣れているニコニコ顔を見ると、すっかり酔いが醒めたあかりは冷静になることができた。