モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています
(だって先輩たちも職場結婚してるし……)
なんせ、女性警官は同僚と結婚することが多いのだ。
公務員だから産休育休もしっかり取れるし、その後は負担が少ない部署で時短や、両親を頼りながら働いている。
あかりもその先輩たちをロールモデルにして、自分も出来ると楽観的に考えていたのに。
「悪い」
流石に追い詰めすぎたと思ったのか、颯から詫びの言葉が出てくる。
けれどあかりの心はささくれだったままだ。
「だから……結婚してやるから私に仕事辞めろって言うんですか?」
「いや」
短く否定して颯は再びタバコに火をつけた。加熱式たばこ独特の甘ったるい匂いが鼻に抜ける。
煙が出ないタバコをくゆらせる颯をあかりは無言で見つめる。
次の言葉を待ちながら颯の顔を観察するが、あかりには何を考えているか読み取れなかった。
殊更時間をかけてタバコを吸った颯はあかりに向き合うと、何か吹っ切れたような笑みを浮かべる。
滅多に笑う顔を見せない颯の表情に、不覚にもあかりはときめいてしまう。
あかりの動揺に気付いた颯は、チャンスとばかりにテーブルの上にあった彼女の手を握りしめ、一息に言った。
「オレが警察を辞める」