モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています

弟よ、なぜ知っている?


「あかりー!昨日の昔なじみの男との飲み会はどうだったんだー?」
 職場に行くなり早速上司の早野に訊ねられる。
 警察(ここ)では、正式な場はともかく、日常であかりのことを「福田」と呼ぶ者はいない。他にも同じ名字の警官が複数いるからだ。
「どうって、普通ですよ」
「普通ってなんだよ!」
「特に何も報告することはありませんってことです」
「なんだ、つまらんな。若いんだから別れた男引きずってないで新しい恋人くらいサッサと作れ。そしてできるだけ若いうちに結婚しろ。ここにいると年取るにつれてスレていくからなー」
「はいっ」
 早野の言葉にあかりは敬礼を返す。

 一般の会社ではハラスメントに該当しそうな早野の言葉。
 だけれども、警察官という特殊な職業では普通の勤め人のような常識は通用しない。
 常に報連相が求められる職場なのだ。
 あかりが昨日仕事終わりに理貴と飲みに行ったことも、一ヶ月前まで先輩の警察官と付き合っていたことも、そして別れたことも全部報告済みなのだ。
 職場以外の友人に話すと驚かれるが、祖父も父も、長兄も弟も警察官という一家に育ったあかりには「そういうもの」として認識していた。
 あかりは早野の言葉を素直に受け止める。
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