モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています



「はぁ……」
 あかりは深いため息をつく。目の前には理貴が、そして今二人は動物園にいた。
「なんで……」
「なんでって。約束したじゃん」
 理貴のほうが疑問だという顔であかりを見る。

 確かに約束した。していた。証拠は、理貴との通話履歴と、そのあと送られて来ているメッセージである。
 
 土曜日の十時――動物園の前で待ち合わせで。

 問題は、あかりには全くその記憶が残っていないことだ。

「……覚えていないんだよね」
 理貴は笑って、「だろうね」と答える。
「半分寝てたし、あかりちゃん」
「なら無効……」
 理貴は笑いながらも首を横に振る。笑っているが、目は真剣だ。
 理貴はここであかりが――覚えていないといえども約束を反故にすることは許さないだろう。
 面倒だったが、約束は約束だ。あかりも覚悟を決めることにする。
 本当なら寝たいのを押し殺して連日の残業続きで疲れ切った体を引きずり、律儀に待ち合わせ場所まで来たのだ。
 ここまで来た労力を考えると、真っ直ぐ家に帰るのは悔しいのだ。
 どうせ家に帰っても寝るだけだし、今から帰って寝ると生活リズムが崩れることは必至だ。
 それなら大人しく理貴に付き合うことにする。

 それに。
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