モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています
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「あかり、座れ」
案の定待ち構えていた様子の長兄の雅人は早速あかりを呼びつける。いつも庇ってくれる次兄の拓人は海外赴任中で戻ってこれなかったから不在だし、父母は住職の見送りで席を外していた。
弟の幸人は、雅人を見るやいなや、「トイレ」といってとっとと逃げ出していた。
この場にいる祖父だけは興味深そうに二人を見るが、余計な口は挟まないで静観している。
(だから来たくなかったんだよ……)
心の中で毒づいて、それでも大人しく雅人の前に座ったのは後が面倒だと悟っているからだ。
「何?」
つっけんどんな言い方はいつものことだ。雅人も職場ではないから特に目くじらを立てることはないはずだ。なのに兄はピクリと片眉を上げる。
怒っている時の雅人の仕草にあかりはうっ、となる。無意識に体が後ろに逃げるあかりを阻止するかのように、雅人の鋭い言葉が飛んできた。