失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
 続けてアナウンサーは解説役の人にコメントを求めた。

 年配の男性は、今回の逮捕に踏みきるため、警察庁はずっと今回の犯罪者グループを追っていたのではないか、集めた資金を指示役が自分たちで使うためではなく、たとえばテロ資金として供与していた可能性もあり、そうなると国家を揺るがす事態となるため、より慎重な捜査が求められる、など述べていく。

 もしかして光輝さんがずっと忙しかった理由って、この件?

 彼の仕事の内容は知らされていないが、まったく無関係とも思えない。

 光輝さんって本当に大変な仕事をしているんだ。

 すごい人だと尊敬する一方で、彼の身を置いている世界が自分とはまったく別に感じて胸が苦しくなる。光輝さんが、心安らぐ時間ってあるのかな?

 つい足を止めたせいで、人の流れの中で邪魔になる。ウィークリーマンションのエントランスは歩いてすぐだ。けれど私は、そちらとは別方向に向かって歩を進め出す。

 まだマンションの工事は終わっていないかもしれない。でも自分が帰る場所に今は行きたい。彼に会えないのは百も承知で、私は光輝さんと生活していたマンションを目指した。

 たかが一週間、されど一週間。実家に行っていたのもあり、もう日が沈みそうだが、少しだけ暑さが落ち着き、じめっとした空気を肌で感じる。

 行き交う人々も同じなのか、暑さに顔をしかめている人が多く、小型の扇風機を自身にあてている人もいた。

 徐々に近くなるマンションを視界に捉える。外から見ると、工事をしている様子はいっさいないが、いつまでかかるのか。
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