失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
 父と大きなトラブルがあったわけでも、事業がうまくいっていないわけでもない。理由を尋ねても曖昧にかわされるだけで、とりつく島もない。それどころか父のもとで料理を学んできた二号店のシェフを引き抜く算段でいるつもりなのも告げられた。

 父が認めた彼がシェフを務めているから、カルペ・ディエムの名でお店ができている。彼なしではカルペ・ディエムの系列店として名乗れない。

 どういうつもりなのか、両親を通しても埒が明かず、その際、なぜか父の娘である私たち姉妹が話に絡んでいると聞き、思いきって私は大林さんに直接尋ねた。すると彼はとんでもない発言をしてきたのだ。

『共同経営者としては手を引くつもりだが、君のお父さんが 私の身内となるなら話は別だ』

 意味が理解できず呆然とする私に対し、大林さんは鼻を鳴らして笑った。

『うちの息子は、残念ながらまだ独身でね。どうだろう、妹さんが息子と結婚するなら、親族として今後も変わらない支援を約束しよう』

 頭を殴られたような衝撃を受ける。つまり息子の嫁に妹を差し出せば、今まで通り支援を続けるということなのか。両親にもすでに話していたようだが、断固拒否されたとも聞かされた。

 しかし、ひとつ疑問が残る。どうしてわざわざ妹を指名するのか。

 私には二歳下の妹、可南子(かなこ)がいる。

 大林さんの息子はもう四十近くになると聞いているが、私たち姉妹は顔を合わせた記憶はない。
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