失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
 うれしくて、幸せでどちらからともなく口づけを再開した。

 自分から唇の力を緩めると、彼の舌が隙間からすべり込み、私も精いっぱい自ら舌を絡ませる。

「んっ……んん」

 けれど、こういうときはけっして対等にはなれない。すぐに彼のペースで翻弄されていく。それどころか、私は次第に受け入れるだけで、彼の甘いキスに溺れていく。

「あっ……ぅ、んっ」

 左手が使えないのに、光輝さんは右手だけで私をしっかりつかまえ、キスを続けた。

 やめてほしくない。こんなにもキスが気持ちいいのは、光輝さんが相手だからだ。

 おもむろに唇が離れ、どこか名残惜しく感じる。それを悟ったのか、光輝さんがなだめるように額にキスを落とした。

 唇のやわらかい感触も口内と肌で感じるのは、また違う。光輝さんは私の頤に手をかけ、意地悪そうに親指の腹で唇をなぞった。

「もっとしてほしいって顔だな」

 普段、冷静であまり感情を出さない光輝さんが、たっぷりの色気と余裕が混じった笑みで尋ねてくる。心臓がドクドクと激しく脈を打つ中、私はこくりとうなずいた。

「はい。光輝さんとキスするの、好きです」

 もう遠慮しなくてもいいのだと自分の中にあった規律が緩み、素直な想いを口にする。しかし、光輝さんはどうも冴えない表情だ。

 もしかして、はしたないと思われた?

 焦る私をよそに、光輝さんは相好を崩して、キスをくれた。
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