失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
「ほかの男と結婚しようと躍起になっていたとき、未可子はどうして自分でいいって言ってくれないのかと嘆いていたな」

 実家を救うため、大林さんの息子さんとの結婚を決意したものの相手が私では首を縦に振ってもらえず、途方に暮れていた。そんなとき、光輝さんと再会したんだ。

「冗談じゃない。そんな価値のわからない連中に未可子は渡さない」

 珍しく怒りの感情をあらわにして、光輝さんは私を見すえた。

「俺は未可子がいい。きっかけはいろいろあったが、結婚したいと望むのは未可子だけだ」

 ああ、もう。

 かなわない。どうして光輝さんはいつも私が欲しい言葉をくれるの?

 目の奥がじんわりと熱い。ずっと感じていた、光輝さんと結婚した経緯の不安とかうしろめたさがすべて吹き飛ぶ。

 私は自ら光輝さんに抱きついた。

「私も、望むのは光輝さんだけです」

 望んでもいい。欲しがってもいいんだ。

「ずっと光輝さんの妻としてそばにいたいんです」

 続けてぱっと顔を上げて笑みを浮かべ、わざとらしく話題を変えた。

「ひとまずシャワー浴びましょう。お手伝いしますよ」

 光輝さんはわざとらしく右肩をすくめた。

「一緒に入る選択肢はないんだな」

「そうですね……でも、光輝さんのけががよくなったら、一緒に入ってもいいですよ」

 羞恥心でやや小声になったが、光輝さんは目を丸くした後、口角を上げた。

「それは一日も早く治さないとな」

 軽くキスを交わし、ふたりでバスルームへ向かう。

 今日は散々だった。苦しくて怖い思いをして、たくさん泣きそうになった。けれど、今このときから、やっと光輝さんと本物の夫婦になれた気がする。
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