失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
 容疑が固まり次第、逮捕されるのは間違いないそうで、それに先立って父親である竹中局長が辞任したのだ。おそらく今までもみ消してきた千恵さんの余罪も同時にあきらかになるだろう。

 それは警察庁の不祥事として扱われると思うと、やはり不本意だ。

 光輝さんみたいに真面目にがんばっている人の方が圧倒的に多いのに。

 被害者なので教えてもらったが、私を襲った男に依頼したのは正也だった。それをお膳立てしたのが千恵さんだったそうで、意外な事実に驚きが隠せない。

 偶然、駅で私と正也の会話を聞いた千恵さんは、正也をけしかけ、あの男を紹介したそうだ。あくまでも自分の手は汚さないために。

 正也も私が少し痛い目を見て今の夫と別れたらいいと思ったそうで、千恵さんの話にまんまと乗ったというわけだ。当然、正也もあの男も逮捕された。

 光輝さんは千恵さんではなく正也経由からあの男の位置情報を手に入れ、あの場に駆けつけてくれたらしい。

「そろそろ眠たいのかな? 光輝さん、本当に抱っこしなくていいんですか?」

 凌空が眠る前に、と思って声をかけたら、光輝さんはやわらかく笑った。

「かまわない。赤ん坊を抱っこしている未可子が見られて満足している」

 それは、どう受け止めたらいいんだろう?

 あれこれ思い出に浸っている間もずっと見られていたのだと思うと、なんとなく気恥ずかしい。

 私は凌空を抱っこしたまま慎重に光輝さんに近寄る。

「光輝さんばかりずるいですよ。ほら、抱っこしてください」

 凌空を彼に渡すと、光輝さんはすんなり受け取った。
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