失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
 アパートの来客用駐車場に車を停めてもらい、今度こそ車を降りた。

「わざわざありがとうございました」

 地面に足をつけると視界がぐらりと揺れる。予想以上に酔っていたのか、酔いが回ったのか。体に力を入れて平静を装っていると、不意に先ほどバーで彼に会計をしてもらったままなのを思い出す。

 慌てて振り向こうとしたら、足を取られバランスを崩しそうになる。転びそうになった瞬間、たくましい腕に支えられた。

「まったく……。どれくらい飲んだんだ?」

「す、すみません。そんなには飲んでないんですけど」

 すぐに離れ、謝罪する。言い訳したもののこうして彼に迷惑をかけている以上、説得力がない。

「部屋まで送っていく」

「あ、いいえ……」

 申し出を断りたい衝動に駆られたが、平気だと返して彼が納得するだろうか。光希に私を無事に家に送り届けるよう言われているだろうし。

 下手に反発せずに頭を下げる。

「すみません」

「謝ってばかりだな、君は」

 それは、どういう意味なんだろう。あきれているのか、だったら余計な手間をかけさせないでほしいと暗にとがめられているのか。

 考えてもわからない。心を無にして、階段を上っていく。光輝さんはゆっくりと私の後をついてきた。

 木造アパートの二階の端が私の部屋だ。職場や自宅とほどよく近く、比較的新しくて綺麗だったので社会人になったときにここを選んだ。
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