失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
「妹は、結婚についてなんて?」

「妹は、望まれているなら私が結婚するって、付き合っていた彼と別れたんです。でも、その彼との子どもを妊娠しているってつい先日わかって……。生ませてあげたいし、本人も生みたいと言っています 。そんな妹が大林さんの息子さんと結婚できるわけないし、させたくありません」

 おなかの子どもごと受け入れる気など、先方にはさらさらないだろう。だったらいっそのこと、妹の事情を大林さんに伝えようかとも思った。そうしたら、息子の結婚相手は私でいいと言うかもしれない。

 けれどそれ以上に、話がこじれるだけだと予想し、妹の妊娠は黙っておくことにした。だからこそ、大林さんの息子と結婚できるんは私しかいない。

 妹は両親の事情を知るや否や、付き合っている相手がいるにもかかわらず、大林さんの息子さんと結婚すると決めた。

 姉として今となっては後悔している。相手が妹を望んでいることなど知られなければ、私がもっとうまく立ち回っていれば、妹は恋人と別れる必要がなく、ひとりで出産を決める事態にもならなかったんじゃないか。

「つまり、問題の本質は結婚云々ではなく金銭的な話なんだな」

 光輝さんが端的に総括する。その通りではあるけれど、あまりにも冷静にまとめられ、なんて返せばいいのか。光輝さんはおもむろに続ける。

「だったら、どうして光希に――」

「光希とは親友でいたいんです!」

 このときばかりは彼の言わんとする内容を察し、遮るように叫んだ。

 どうして光希に相談しないのか。彼はもちろん彼女の祖父は国内どころか世界的に有名な鷹本化成グループの社長だ。

 そんな光希に相談したら、彼女は宣言通り祖父に頼み込むなりして、カルペ・ディエムを閉じないように金銭的な工面を申し出てくれただろう。
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