失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
 道行く人が光輝さんに振り返ったり、女性同士がコソコソ盛り上がったりしている。無理もないと思う反面、彼の隣にいるのが私でいいのかと身が硬くなる。

『余計なお世話かもしれないけれど』

『あ、はい』

 彼から口火を切られ、私は反応する。

『光希のために無理する必要はないよ。組織はそう簡単には変わらない。伝統、しきたり、上に行けば面倒な人間関係も増えてくる』

 私が次期部長に立候補しようとしている件だと悟る。光輝さんは珍しく自嘲的につぶやいた。

『なかなか新しい方法に乗り換えられず伝統を大事にする祖父、規律の厳しい警察組織の中で働く父を見ていたらそう思うんだ』

 光希と光輝さんのお父さんは警察官だ。ノンキャリだけれど優秀で、警察本部の本部長を務めていると聞いた。

 詳しくはないが、警察官はさらには階級がものをいう世界だ。きっといろいろあるのだろう。たかが部活、されど部活。強制でもないし、合わないなら離れるのも手だ。

『でも私、変えたいんです』

 思わず真面目に反論すると光輝さんは目を丸くした。

『苦労するかもしれないですし、なにか大きく変えられることはないかもしれないけれど……変えるためには上の立場に行くしかないから。なにもせずに変わるのを待つくらいなら、自分にできることをがんばりたいんです』

 きっと彼にとっては甘い考えだと思われるに違いない。

 いちいち言い返すんじゃなかったと落ち込む。
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