失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
『な、なにかお礼をしなきゃ。お兄さんってなにが好きなの?』

『いいよ、そんなの。うーん。しいて言うならチョコレートかなぁ』

 バレンタインが近いのもあって、私はお礼も兼ねてチョコレートを用意することにした。両親が店で出しているチョコがあるので、包装を少しだけ手伝って完成させた。

 うちがお店をしていて、箱に『カルペ・ディエム』の名前が入っているから、光輝さんもそこまで重くは受け止めないだろう。

 バレンタインは定期試験と重なり、部活は休みだ。光希の家で勉強しようという話になり、チョコも持っていく。光希に渡しておいてもらおう。

 ところがちょうど家から光輝さんが出てきたところで目が合う。

『こ、こんにちは。この前はウサギのぬいぐるみ、ありがとうございます』

 頭を下げお礼を告げる、すると光輝さんは苦笑した。

『お礼を言われるほどのものじゃないよ。気に入ったならよかった』

『はい! 早速、家に飾ってます! ところで、私があのウサギのキャラクターを好きだって言いましたっけ?』

 尋ねると、光輝さんはそっと私の鞄を指さした。

『いくつかキーホルダーをつけているから。それに、筆記用具もウサギのキャラクターでそろえていただろ?』

 光希とともに彼に勉強を教わったことはあるが、そう何度もない。彼の観察眼と記憶力に感嘆の声が漏れる。

『お兄さん、すごいですね。よく見ていて……まるで警察官みたい』

 なんの気なしに口にして慌てて唇を閉じる。調子に乗りすぎだ。ついでと言わんばかりに、私は持っていたチョコレートの入った紙袋 を彼に差し出した。
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