失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
「あの、お話ってなんでしょうか?」

 しかし自分が尋ねるより、先に彼の話だ。そのために私はここにいるんだから。

 時間も時間なので世間話などせず、単刀直入に尋ねる。すると光輝さんは一度カップをテーブルに置き、わずかに私との距離を縮めてきた。

 自然と顔は横を向き、彼を目で追う。不意に視線が交わり、怖いくらい真剣な表情に私は身を硬くした。続けて、彼の唇がおもむろに動く。

「……その前にひとつ。簡単にひとり暮らしの男の家に上がるのは、感心しないな」

 まさかこの状況をとがめられるとは思ってもみなかった。

「光輝さんが、話があるから上がっていけって言ったんじゃないですか!」

 一拍間が空いたが、感情のまま言い返す。少なくとも招き入れた彼の立場で私を責めるのは違うだろう。しかし光輝さんは表情をまったく変えない。

「言われたからって素直に聞いて、どうするんだ」

 どこかあきれた口調の彼に言い返そうとしたが、先に光輝さんが続ける。

「こうやって俺以外の男の家にも簡単に上がるのか?」

 彼の問いかけに目を瞬かせ、その後すぐに勢いよく否定する。

「そ、そんなわけありません。絶対に断ります。今日は本当に特別で……」

 少しだけ言いよどんでから口を開く。

「光輝さんだから、です」

 彼が相手ではなかったら、こんな真似はしていない。事実だが、口にして妙にドキドキする。

 私の気持ちを悟られるわけにはいかない。それで昔、ひどい目に遭ったじゃない。苦い記憶が胸を覆っていく。
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