失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
 光希の祖父は鷹本化成(たかもとかせい)グループの代表取締役を務めていて、いわば裕福な家庭に育つお嬢様だ。

 実際に会社を継いでいるのは伯父さんで、彼女の父親は警察官をしているから、ごく庶民的な育ちだと光希は話すが、私からすると、光希の家はやはり上流階級の家庭だと感じる。

 けれど、それを感じさせない気さくさと思いやりが光希にはある。

 ぱっちりとした二重瞼の瞳、ウエーブのかかった艶のあるダークブラウンの髪は肩甲骨あたりで揺れ、愛らしい笑顔は出会った頃から変わらない。

 見た目や家柄をうらやましがられる一方で、その分つらい思いをしてきたのを知っている。

 光希と仲良くしている私に、媚びを売っていると陰口を叩かれたこともあった。けれど私は純粋に光希と気が合うからそばにいるし、こうしてずっと友達でいる。

 やわらかい雰囲気の光希とは対照的に私、山口(やまぐち)未可子は、取っつきにくい印象を抱かれがちだ。

 やや釣り上がった目に、メイクもヌーディーカラーのチークにパール系のアイシャドウとついクール系を選んでしまうのも原因かもしれない。

 髪質は硬めで、肩下まである髪は基本的にまとめている。おまけに身長は百六十五センチと光希より十センチ高く、さらにはヒールも好んで履くので、それなりに威圧感があるのも自覚している 。

 身長差を気にする元彼からはヒールを履くなとか、もっとかわいらしい格好をしろとかいろいろ口を出された。最初は必死で彼の好みに合わせていたけれど、結局彼はそういう女性を選んで浮気したのだ。
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