失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
 私の問いかけに、光輝さんはこちらをじっと見つめてきた。その眼差しひとつに動揺が走りそうだ。

「俺の部屋のベッドで一緒に寝たらいいと思っていたんだが」

 ところが彼の口から飛び出した内容に、硬直する。

「だ、だめ! それはだめです」

「なぜ?」

 ワンテンポ遅れて抗議の声をあげる。しかし光輝さんは冷静に尋ねてきた。

「私、すごく寝相が悪いので! 光輝さんの睡眠の妨げになると思います!」

 迫るように光輝さんに訴えかけるが、彼は顔色ひとつ変えない。逆に緩やかに口角を上げた。

「どれくらい悪いのか、気になるな」

「本当ですよ。やめておいた方がいいです」

 そんな興味はまったく必要ない。すると光輝さんは笑みをひそめ真顔になる。

「未可子がどうしても嫌だって言うなら、かまわない」

 あっさりと引き下がられたもののその解釈は間違っている。

「嫌じゃなくて……」

 真面目に否定してどうするのか。けれどこの拒み方はそう捉えられてもおかしくはない。寝相が心配なのも事実だが、それ以上に――。

「光輝さんは、他人と一緒に寝られるんですか?」

 好きでもない相手と、と聞きたかったが、そこまで触れる勇気はなかった。
< 51 / 163 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop