失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
 付き合った人はいたけれど、たった半年でそのうち会ったのは数えるほどかもしれない。途中、仕事が忙しいからと、なかなか会えなかったのは、浮気していたからなのだろう。

 軽くため息をつく。緊張しているのは、経験が乏しいからだけじゃない。光輝さんが相手だと、どこまでも臆病になる。

 これ以上、彼に嫌われたり失望されたりしたくない。

 バスルームを借りるのも緊張したが、なんとかシャワーを浴び終えパジャマに着替える。もっとかわいいパジャマを用意するべきだったが、そんな時間もなく、やわらかい毛が気持ちいいよく着ている淡いピンクの上下セットだ。

 さらには、すっぴんを見られるのが恥ずかしいが、どうしようもない。これから夫婦としてやっていくのだからと覚悟を決め、うつむき気味にリビングにいる彼のもとに近づく。

「あの、お風呂ありがとうございました。改めて、今日からよろしくお願いします」

 光輝さんはノートパソコンを開き、その傍らには難しい本が積まれていた。仕事の邪魔だったかな。

 彼は手を止め、ゆっくり立ち上がる。

「こちらこそ、よろしく頼む。すぐには難しいかもしれないが、緊張せずくつろいでくれ。未可子の家でもあるんだ。好きに過ごしたらいい」

 それは当分、難しいだろう。そして、気になっていた点について尋ねる。

「あの、ベッドはゲストルームのものを使ってもかまいませんか?」

 さすがにベッドは持ってこられず、光輝さんも必要ないと言っていたのだが、どこの部屋のものを使っていいのか。自室として与えられた部屋にベッドはなかったし。
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