失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
 いつもワックスを使って整えられている光輝さんの髪は湿りけを帯びて無造作に下ろされ、心なしか幼く見える。首筋からうっすらと見える鎖骨のラインに息をのんだ。

 なんとも言えない色気にあてられ、ふいっと彼から視線を逸らす。

「未可子」

 名前を呼ばれ、部屋を出ようとする光輝さんに慌ててついていく。

「お邪魔します」

「どうぞ」

 部屋に入る直前で無意識に挨拶をしたら、彼が律儀に返した。光輝さんのそういうところが好きだと改めて感じる。

 彼の部屋はグレーを基調としたシックな雰囲気で落ち着きのあるテイストだった。ここにも本棚があって洗練された大人の男性らしい、とでもいうのか。存在を主張するベッドはたしかにふたりで寝ても十分すぎるほどの大きさだ。

 ダブルより少し、大きいくらい?

 彼が一緒に寝るよう提案してきたのもうなずける。過去の付き合った女性ともここで過ごした経験からなのか。

「未可子はどちら側がいい?」

「どちらでもかまいません。光輝さんのいいように」

 こだわりはない。ドアに近い方からベッドに入らせてもらい、彼が右側になる。やわらかい上掛け布団の感触にベッドが重みでわずかに沈む感覚。緊張が一気に増す。
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