失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
 妹から自慢の親友だと紹介され、高校生の頃に妹が部活でトラブルになった際も、気にしてよくうちにやってきていた。妹がまた部活に来られるように、部長になってやり方を変えるとまで言ってしまうお人好しで、でも真っすぐな子だった。

『なにもせずに変わるのを待つくらいなら、自分にできることをがんばりたいんです』

 驚くほど擦れていなくて一生懸命。自分のためではなく他人のためにそこまでできる人間がどれほどいるのか。

 感心しながらも、人のことばかりで少しだけ心配になる。彼女はちゃんと誰かに頼ったり甘えたりできるのだろうか。

 そんな気持ちでなにかと気にかけていたが、あるときを境に、なんとなく避けられるようになり、自分も就職して彼女と積極的に関わることもなく疎遠になっていた。

 とはいえ、何年も会っていない俺が迎えに行ったら彼女は驚いて警戒芯を抱かせるだけではないか。

『未可子、ここずっとなにか悩んでいるみたいなの。思いつめた顔をして……。私には心配かけないようにって話してくれないから。お兄ちゃん、警察でしょ? うまく聞き出してアドバイスしてあげて』

 警察をカウンセラーや便利屋かなにかと勘違いしていないだろうか。

『お兄ちゃんが難しいなら、遙一さんの友達に行ってもらうよ。前に一度未可子とも会っていているから――』

『俺が行く』

 はっきりと答え、バーの店名と場所を聞く。妹の婚約者を信用していないわけではないが、ほかの男に任せる選択肢は考えられなかった。
< 60 / 163 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop