失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
 未可子と関わりがなくなり、もともとの関係性の薄さからしょうがないとあきらめていた節もあったが、この機会を逃すわけにはいかないと思った。

 本当はずっと彼女を気にかけていた。会いたいと願っていたんだ。

「そういえば、神奈川県警より連絡ありましたよ。鷹本さんが声をかけた外国人、トクリュウ……おそらく『狐火(きつねび)』が募集したアルバイトのために来日したみたいです。無事保護されて帰国するみたいですが」

「そうか」

 金平から話題を振られ、我に返る。顔には出さず端的に答えた。匿名・流動型犯罪グループ、通称〝トクリュウ〟として、最近勢力を増してきているのが狐火だ。

 金平が言うように、俺は未可子の実家に挨拶に行った帰り、挙動不審な若いアジア人の男に声をかけた。ただの善意ではなく彼に引っかかるところがあったからだ。

「彼が闇バイトに手を出そうとしていたってどこでわかったんですか? そんなこと本人は言うわけないでしょうし」

 根拠などなく、面構えや雰囲気で違和感を抱くケースも多い。しかし今回の二十歳そこらの青年はあきらかに不審だった。

「友達と約束した場所に向かっている途中道に迷っているという話だったが、留学生や実習生にしては言葉がつたなすぎる。観光客だとすると、あまりにも軽装だ。それなのに待ち合わせしている友人との関係を聞いてもネットで知り合ったとしか曖昧にしか答えられず、どこかはっきりしない」

 世間話をしながら相手を観察する。もちろんこちらの意図や警察だと微塵も思わせないように。
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