失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
「鷹本さん、いつも厳しい顔していますから。奥さんの前ではちゃんと笑っていたりします?」

「どうだろうな」

 そっけなく返しながらも、金平のこうした自分のペースに相手を巻き込むところは純粋に能力として認めている。話を終わらせたつもりだったが、さらに金平は続ける。

「ということは、鷹本さんが最近口にしているチョコレートは、奥さんからのプレゼントなんですね」

 唐突な金平の指摘に視線を送ると、彼はにやりと口角を上げた。デスクの引き出しの中には未可子からもらったチョコレートの缶がある。

 仕事で膨大な情報を網羅して処理するのにはかなりの集中力が必要になり、合間に糖分を摂取するようにしていた。このルーティンは学生の頃から変わらず、未可子にもらったチョコレートは職場に持ってきていた。

 金平は俺のデスクを指さした。

「鷹本さんがご自分で選ぶには入れ物があまりにもかわいらしすぎるデザインですし、特別な関係ではない人の贈り物だとしたら、あなたはひとりで食べる真似はしない」

 どうやら金平を侮っていたらしい。ここにいるキャリア組は能力的に認められた優秀な人間の集まりだ。洞察力に優れ人の機微に敏い者ではないと務まらない。

「そうだ。だから君にはやらない」

「ええ。それでいいと思いますよ」

 にこりと微笑み、金平は去っていった。
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